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駆け出し忍者のくノ一修行
イラストレーター
いずみ朔庵
忍者修行 其の七 ~江戸に忍者が大集合!決戦は何曜日?の巻㊦~&【コラム:忍者の豆】⑧

東京タワーに向かう忍者たち

 とはいえ、大人になってから10kmも歩くことはそうそうないので、後半になるとバテてくる情けない忍者たち。
 東京タワーのふもとで休憩を取る姿は、まるで戦場から落ちのびる忍び集団のようです。古い街並などを歩いていると昔にタイムスリップしたみたいな気持ちになりますが、今日は真逆。 まるで自分が戦国時代から現代にやって来たような気分。

 ほほう、日の本(ひのもと)の未来は天高くそびえる石のごとき建物に住まい、大地は岩のように固められ、人馬も引かぬ大きな箱に乗って移動するのか。この冷たく甘き食べ物はなんと申す。おかしら、それはソフトクリームと言うものですぞ。

画:いずみ朔庵



 最後のポイントをまわり、後は電車に乗って戻るだけ……という時に、前を行く教授たちがザワつきます。新橋駅の近くにある改修中のビルの場所が、元は甲賀水口藩の拝領屋敷があった場所だったのです。急きょガイドをはじめる教授、なんの変哲もないビルを一斉に撮影する忍者たち、大勢の忍者たちにバシャバシャ写真を撮られてわけのわからない工事現場の人々。
 そして、「甲賀が喜ぶね」という教授たちの声。

 そう、このイベントは伊賀主導で、甲賀は参入したばかり。マンガなどでは敵味方に分かれたり、どちらかが悪者に書かれたりしますが、両者は地理も隣り合わせで行き来も多く、決して仲が悪いわけではありません。甲賀忍者で有名な人が実は伊賀の出身だった、なんて事もあるのです。それでも良きライバルとして、時おり対抗意識が出てくるのが傍目に見ていて面白い。それはまるで高崎と前橋、浦和と大宮。中学生が他校の生徒に「お前どこ中(中学校)だよ」と言ってるようなほほえましささえ感じます。

 ちなみに、この日はイベント会場で伊賀・甲賀の市長による「手裏剣対決」が行われましたが、勝敗は60対30で甲賀の勝ち!今年は甲賀に軍配が上がりました。

※説明しよう!「高崎と前橋、浦和と大宮」とは
 どちらの街も「どちらが都会か」で対抗意識があり、仲が悪いと言われています。ちなみに私は浦和に住んでいるのですが、浦和と大宮でスポンジバットで合戦して勝敗を決める「どちらが都会か杯」っていうのやりませんか? 盛り上がると思うんですけど。カンのするどい方はお気づきでしょうが、大宮より先に「浦和」って書いてるところがポイントです。

イベントでお会いした忍者さんたち

甲賀忍者検定でお会いした方にも再会


【まとめ】
 忍び装束で街を歩くと、小さな子供から大人まで、外国の方も一目で忍者とわかってくれます。忍者を知らない人はいないのじゃないか、というくらい強烈なアイコンを持っている「忍者」。そして見る人を笑顔にする力があります。
 忍者は伊賀甲賀だけでなく、全国各地に流派があり、現地でもそれぞれが独自の活動をしていますが、それが地方への観光アピールになっている側面もあります。戦国時代の忍者は主に仕え、情報を操るのが仕事でした。現代に生まれた忍者たちには残念ながらそういう仕事はありません。

 でも、でもですよ皆さん! 忍者に興味を持った人が、忍者ゆかりの場所に旅行に行ったり、忍者に憧れた海外の人が日本に遊びに来てくれたら、それは日本にとっても喜ばしいことですよね。忍者目当てで行った場所が気に入って移住したり、地元の焼き物に一目惚れして陶芸家になったり……そういう人生のきっかけが忍者だった、という人もいるかもしれないのです。経済を回したり、誰かの生き方のきっかけを作ったり。これこそが現代の忍者の仕事と言ってもいいのかもしれません。

 最後に、今日のウォーキングのアンケートを記入しましょうか。ええと、次の質問は。
 「伊賀と甲賀とどちらが好きですか?」
 ……さりげなくこんな質問を入れてくるところ、やっぱり好き!(つづく)


【コラム:忍者の豆⑧】



 戦国の世が終わり、江戸期に入ると忍者の一部は武士として江戸に赴き、警備などの職務に当たります。そのため、彼らの組屋敷があった千駄ヶ谷、四谷、新宿などにはゆかりの神社仏閣が残されており、都内でもその形跡をたどることができます。服部半蔵が警備を担当した「半蔵門」、服部一族の墓が祀られている「西念寺」、甲賀稲荷社のある「鳩森八幡神社」などなど。
 江戸期は、忍者にとって特殊技能を使う機会が減ってしまい、身分もお給料も低い不遇の時代ではありますが、平和になったことでやっとまとめることができた忍術書や、日々の暮らしの記録など、この時期に残された資料は多く、まだまだたくさんの古文書が眠っていると言われています。

画:いずみ朔庵



【朔庵亭 いずみ朔庵イラストレーションギャラリー】
http://www.sakuan.net/
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【いずみ・さくあん】
歴史や時代物をはじめ、着物や和柄など日本文化に関するイラストを得意とし、時代小説の挿絵や装画などを中心に活動中。担当した装画には、『お文の影』(宮部みゆき)、『ぼんくら同心と徳川の姫』シリーズ(聖龍人)、『恋と歌舞伎と女の事情』(仲野マリ)などがある。和雑貨メーカーへのデザイン提供や江戸解説も行うなど、“江戸が好きすぎるイラストレーター”として活動中だが、実は幼いころから大の忍者好き。2017年には「甲賀流忍者検定」初級に首席で合格し、現在は一人前の忍者になるために修行中。著書に『財布でひも解く江戸あんない~マンガで辿る江戸時代に暮らしと遊び』(誠文堂新光社)がある。
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