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にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
第5回 商圏は小さく、志は大きく(桑田醤油・山口県)

桑田浩志さん、麻衣子さん夫妻

 山口県防府市にある桑田醤油のご主人、桑田浩志さんの経歴はユニーク。前身は、数々の情報誌や起業家を輩出することで知られる「リクルート」の敏腕営業マンだったのです。
 醤油蔵の跡とり息子の歩む道は、東京農業大学などで発酵醸造を学び、同業での経験を積んで家業に戻ってくるパターンと、全く異なる業界に出てから戻ってくるパターンとの2つあるように感じます。桑田さんは後者。実は、ITベンチャー企業の立ち上げを計画し、家業に戻ってくるつもりはなかったのだそうです。

 転機は、帰省した折に配達を手伝おうと、山奥にあるお年寄りの家を訪ねたことでした。「片道40分以上かけて1本数百円の醤油を置いて帰ってくる。完全に赤字ですよね。でも『桑田醤油じゃなきゃダメなんじゃ』と、キラキラした笑顔で言ってくれるお年寄りがいる。そのとき、『利益を上げることだけが仕事じゃない』と強く感じたのです」
 そんな桑田さんの方針は、〝超〟地元密着。都心で仕事をしてきた経験を生かせば、付加価値のある高級醤油を首都圏向けに販売するという発想になりそうなもの。ところが、「うちの商圏は防府市」と言いきるのです。

醤油で唯一、地産地消の証明である「正直やまぐち」マークの使用が認められている

 山口県では、一般的に甘い醤油が使われています。原料は脱脂加工大豆が中心で、アミノ酸液や甘味料を添加して甘みづけをしています。地元の醤油メーカーも丸大豆をベースにする醤油はほとんどありませんでした。
 それならば、山口県でしかできない醤油を造りたい――。その思いから、山口県産の丸大豆と小麦を使用し、この地で100年の歴史を刻んできた杉の木桶を使い、地元の四季を感じながらの醤油造りに挑戦。先代ともども同業の仲間を訪ね、丸大豆仕込みの教えをこい、試行錯誤の末に地産地消費の醤油造りに成功したのです。

 醤油には、豆、小麦、塩以外の原材料は使わない無添加と、アミノ酸液や甘味料などを加える有添加があります。また製法によって、本醸造、うま味成分が凝縮されたアミノ酸液を加える混合・混合醸造の3つに分けられます。それぞれメリットとデメリットがあり、一概に添加物が入っているから「ダメな醤油」ではありません。醤油に使われる添加物は国が安全性を認めたものだけであり、山口県のような中国地域、九州や北陸などは、地域で愛される味わいを出すために添加物を使った醤油が一般的です。

 でも、このような醤油に関する正しい情報は必ずしも消費者に届いていないように思います。
 桑田醤油は、無添加・有添加の両方だけでなく、本醸造・混合・混合醸造の3種類すべてがそろう珍しい蔵。だからこそ、「甘い醤油をプライドを持って造り続けたい」という桑田さんの言葉は、とても力強い。これは、顧客の顔が見えるくらいに商圏を限定することで見えてきた彼の信念のようなものかもしれません。

 「消費者に対して真っすぐで正直な醤油屋でありたい。いつ、誰が見学に来ても、喜んで迎えられる醤油造りをしたいのです!」
 その言葉は、いつも前向きな力強さにあふれています。


☆この1本でこの料理☆

桑田醤油(山口県)



マルクワ醤油 うまくち

価格:390円(税込)/ 原材料:アミノ酸液、食塩(国産)、脱脂加工大豆、小麦(山口県産)、砂糖、カラメル色素、調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア、甘草)、保存料(パラオキシ安息香酸)、V.B1

「コロッケ」


 山口県産の小麦を使い、杉の木桶で1年半熟成。地元のスーパーや食料品店のほとんどで定番商品となっている。白身の刺し身や焼きおにぎりにも合うが、おかみさんの麻衣子さんイチオシはコロッケ種の味つけ。「マルクワ醤油 うまくち」を使うと、ジャガイモの甘味が引き立ってホックホクの仕上がりに。

① ジャガイモは適当な大きさに切り、ゆでて熱いうちにつぶす
② タマネギはみじん切りにして、サラダ油でひき肉と一緒に炒める
③ 火が通ったら塩コショウをし、「マルクワ醤油 うまくち」を加える
④ さらにつぶしたジャガイモを加えて混ぜ合わせる
⑤ 冷めたら俵形にまとめておく
⑥ 小麦粉、卵、パン粉をつけて中温(170~180度)で揚げる


【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

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連載「職人醤油のつくり方」では、高橋万太郎さんが、100mlの小瓶に入ったこだわりの醤油を扱うユニークな取り組みに至るきっかけとなった職人さんとの出会いや、若き蔵人たちとの交流などを紹介しています。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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