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にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
第2回 熱烈なファンが支持する絶妙な味わい(正金醤油・香川県)

1920年創業の正金醤油

 訪問したのは夏の暑い時期。木桶の並ぶ蔵の中はサウナ状態で、10分も話をしていると全身汗だくになります。そこから外に出ると、真夏の太陽が照りつけているのに涼しく感じてしまう。そんな不思議な感覚を今でもよく覚えています。

 正金醤油があるのは、醤油の産地として知られる香川県の小豆島。山吉(やまよし)蔵、西蔵、東蔵と呼ばれる複数の蔵の中には桶が120本あり、日本屈指の保有数です。
 蔵に入り階段を上がっていくと、諸味が醸し出すふわっと心地よい香りに包まれます。そこには、ともすれば古い蔵にありがちな鼻につくカビ臭さがありません。理由は、蔵の2階を見て納得しました。木製の床や桶がきちんと管理されていて、ニスが塗ってあるかのように光沢があるのです。
 醤油のもととなる諸味を熟成させるためには、定期的にかき混ぜる撹拌作業が欠かせません。そのときには諸味のはね返りが必ず生じるものなのですが、このきれいさからは、それらを毎回毎回ふき取っていることがわかります。
「すごいですね!」と伝えると、「うちなんか、まだまだです」と4代目の藤井泰人さん。

創業当時から使っている木桶は手入れが行き届いている

 その話しぶりから、謙虚というより本気で言っているのがわかります。それは、全国ネットのテレビ取材の依頼がきても、「うちより立派な蔵元さんはたくさんありますから」と断ってしまったというエピソードからも伺えます。私の知る限り、一番謙虚な職人さんかもしれません。

 そんな藤井さんに、どのような醤油造りを目指すのかと聞いてみると、返ってきたのはまず、「醤油がおいしくなりすぎている気がするんです」という言葉。「先代のころには、取引先から大手を引き合いに出されて『これよりもおいしくて安いものを持ってこい!』などとよく言われました。大量生産の時代を通して、どんどん醤油の質は上がってきたと思います。うま味は高くなったし、香りもよくなった。でも、大切なのはバランスだと思うのです。うま味が強過ぎて濃い醤油は、料理好きな方からは敬遠される気がするんです」


笑顔のたえない藤井さん

 そう話す藤井さんですが、正金醤油の淡口醤油は、うま味を計る指標となる窒素量が1・5パーセントをこえていて、一般的な基準からするとかなり高い値です。このうま味レベルでありながら、絶妙のバランス。これぞ、相当に高度な経験知のなせる技です。
 それでも、満足せずに謙虚な姿勢を崩さない藤井さん。こういう人が造るから、正金醤油の醤油は真面目でとてもやさしい味わいがする。
 「正金さんの醤油じゃないとダメ!」。そんな熱烈なファンが多い理由が、あらためてわかりました。


☆この1本でこの料理☆

正金醤油(香川県)



天然醸造 うすくち生醤油

価格:411円(税込み)/原材料:大豆、小麦、食塩

「サツマイモの煮物」


 サツマイモのきれいな色を生かしたいなら、淡口醤油。和風料理と相性のよい「天然醸造 うすくち生醤油」は、味も色も少し濃い目なので、いつもより控えめに使うくらいがちょうどよい。先に醤油を入れるとサツマイモが固くなってしまうので、後から入れるのがコツ。

① サツマイモを食べやすい大きさに切り、水にさらしてアクを抜く

② 鍋にサツマイモとひたひたの水・砂糖を入れ、落しブタをして煮る

③ 柔らかくなったら「天然醸造 うすくち生醤油」で味つけして仕上げる


【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

☆こちらもぜひお読みください☆

連載「職人醤油のつくり方」では、高橋万太郎さんが、100mlの小瓶に入ったこだわりの醤油を扱うユニークな取り組みに至るきっかけとなった職人さんとの出会いや、若き蔵人たちとの交流などを紹介しています。
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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