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石川浩司の缶コレランニング
ミュージシャン
石川浩司
第8回 こんなとこにもコマーシャル(上)
 昔、テレビコマーシャルに出ていたことがある。
 1990年に「たま」というバンドがデビューした前後は、JA(農協)や地方のアルバイトニュースなどいくつかに出ていたのだが、最もヘビーローテーションされていたのは川崎製鉄(当時)のCMだろう。
 たまのメンバー4人それぞれをメインにしたものと、全員のものとの計5種類が作られた。僕がメインのものは、何か巨大な鳥の機械みたいなものに乗って移動しながら歌うという設定だったが、これはほとんど合成。一方、全員一緒に出演するものは基本的に合成なしで、「地球上のいろんな動物と仲良く温泉に入る」というコンセプトだった。

 この撮影がすごかった。
 温泉という設定で、4人が裸で入っている(お湯に隠れて見えない下半身はパンツを履いている)。本当の温泉の温度だったらずっとは入っていられないし、他の動物たちも無理なので、ほぼ水状態のぬるま湯。その中に数時間浸かって動物たちと撮影したのだが、これが大変だった。

 ゾウが、映像に映らないゾウ使いの「ホオリャーッ!」という声と鞭でピシャピシャと強くお尻を叩かれ、それを聞いて興奮したラクダは首をブンブンまわしながらプシャープシャーッと激しい唾液を撒き散らし、それらのデカい動物たちが間近にいるのでタヌキは慌てて転がるように逃げ、サルは「ンギャーッ!」という断末魔のような恐怖の雄叫びをあげ、じっと我慢しているのはイヌくらいのものであった。

 これを「生き物はみな友達」的に撮影するのだから、それぞれの動物が阿鼻叫喚で同じ湯船に浸かっているサマを撮るのには、そのタイミングが合うまでいろんな「動物待ち」で長い時間の撮影となった。
 さらにやっと撮影が終わり、冬だったので実はブルブルでシャワーを浴びたのだが、シャワーが2つしかなく、先に入った僕ともうひとりのメンバーは無事だったが、後の2
人はなんとお湯が出なくなってしまったとかで、唇を紫にしてガタガタ震えながら控え室に戻ってきた。
 CMの撮影現場とは、テレビに映ってるホンワカとした雰囲気とは全く違うものであった。

 また、「僕が今までで一番時給換算の高かった仕事」も、やはりテレビのCMである。
 しかしこれは出演ではなく、音だけの仕事。僕はパーカッションで湯桶を叩いているが、この音をCMの画面に出る鹿威しのコン、という音として使いたいというのだ。お安い御用で〜すと引き受けた。
 レコーディングスタジオに入り、桶をスティックでコンとひと叩き。即座にOK。スタッフからの「お疲れ様でした!」の声。まったくお疲れてないが、仕事終了。

 時間にしたらコンの一音など、1秒もない。そしてぶっちゃけるが、このコンひとつでギャラが30万円だった。1秒ないが、仮に1秒として計算した場合、時給に換算すると300000×60×60=1080000000。つまり時給10億8千万円である。
 8千万円は値引きするから10億の仕事、誰かまた気軽にください。待ってま〜す!(つづく)

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【石川浩司のひとりでアッハッハー】
http://ukyup.sr44.info/
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【いしかわ・こうじ】
1961年東京都にて逆子生まれ。神奈川県・群馬県育ち。現在は、2万缶におよぶ空き缶コレクション保管のために埼玉県在住。バンド「たま」にてランニング姿でパーカッション、ボーカル担当。90年に「さよなら人類」でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞などを受賞。2003年に解散後はソロで「出前ライブ」などの弾き語りおよびバンド「ホルモン鉄道」「パスカルズ」などで活動中。旅行記やエッセイなどの著作も多数ある。
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