× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 新刊・既刊案内 お問い合せ
石川浩司の缶コレランニング
ミュージシャン
石川浩司
第3回 初体験は何の味?(上)

缶の裏には「よく振って、そのままかまたはフードにかけて与えてください」と書いてある(日本ペットドリンク株式会社)
 僕は迷っていた。人間として数十年生きてきて。ここで一介の人間としての枠組みを超え、もっと大きな生物としての個を持つのか、持たぬのか。
 しかし目の前の笑顔のデザインを見て僕は決断した。人間としての領域を踏み出そうと。踏み出してしまおうと。
 そこにあったのは「ペット専用牛乳ワンミー」。そう、犬が飲む牛乳である。
 カシュッ。
 犬がプルタブを開けられるのかどうかは疑問だが、僕の指はそれをなんなく開けた。
 コクッコクッコクッ。
 一気に喉に流し込み嚥下する。味は無味無臭の牛乳であった。そしてこの瞬間、僕はケモノとしての第一歩を踏み出したのである。
 コレクションは人間という生物すら超えていく。それでこそ真のコレクターである(本当か?)

 話は少し飛ぶが、僕は自分のホームページを20年近くほぼ毎日続けてる。
「あ~ブログね。よくある今日は何を食べただのどこ行っただの書いてある~」
 いいえ、ちょっと違うんでゴザンス。普通は日記と、ミュージシャンだからライブスケジュールとプロフィールと……ぐらいが多いと思うんだけど、僕は「web版深夜放送」をやりたかったのだ。

これも飲むには勇気がいるかも(株式会社ニッチク NS)
 さらに話は飛ぶけど、僕はいわゆるサブカル(サブカルチャー)という言葉が世間に広まるもっと前から、ヘンテコなものや表舞台にはあまり現れないものが好きだった。然るに最も音楽や映画などのアート全般に大きな影響を受ける中高生時代、僕は田舎に住んでいたのでまわりにそういうものはほとんど無かった。情報はメジャーなものばかりであった。
 ただひとつマイナーものを紹介してくれる場所があった。それが深夜放送のラジオである。そこにはテレビでは絶対に流れてこないマニアックな音楽が流れてきた。大人の本音のトークが聞けた。知らなかった社会の溝を教えてくれた。
 僕はすっかりそれにはまり毎晩遅くまでイヤホンを耳に差し熱中していたセイシュンだった。(つづく)

2万本にもなる石川浩司さんの空き缶コレクションから選りすぐりの1本を、「かもめの本棚」公式インスタグラムで紹介中。インスタグラム【今日の空き缶】ぜひご覧下さい。

【石川浩司のひとりでアッハッハー】
http://ukyup.sr44.info/
ページの先頭へもどる
【いしかわ・こうじ】
1961年東京都にて逆子生まれ。神奈川県・群馬県育ち。現在は、2万缶におよぶ空き缶コレクション保管のために埼玉県在住。バンド「たま」にてランニング姿でパーカッション、ボーカル担当。90年に「さよなら人類」でメジャーデビュー。同曲はヒットチャート初登場1位となり、レコード大賞新人賞などを受賞。2003年に解散後はソロで「出前ライブ」などの弾き語りおよびバンド「ホルモン鉄道」「パスカルズ」などで活動中。旅行記やエッセイなどの著作も多数ある。
新刊案内