× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 新刊・既刊案内 お問い合せ
食べるしあわせ
職人醤油のつくり方 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第13回 自己主張せずに素材をいかす淡口醤油の魅力(下)

人工的な温度管理はせず発酵させる
 きっかけは昭和40年ごろ、無添加の醤油を造ってほしいという依頼。依頼主が持ち込んだのは、国産の大豆や小麦でした。
 当時は、脱脂加工大豆を原料に、添加物を加えるのが一般的な製造方法で、設備も製法も見直さないと受け入れできない状態。末廣さんは、なんと一から製造方法を見直し、幾多の難題と向き合いながら対応していったといいます。

 その後、地域で共同の工場を造って設備を集約化させようという話になったそうですが、それは主流の脱脂加工大豆用のもの。「丸大豆の仕込みは生産量も少ないのだから、自分のところでやってよ」ということで、これまで自社生産がずっと続いてきたというのです。
「要は、丸大豆に関しては仲間に入れてもらえなかったのです。結果的には、設備もノウハウも継承し続けることができたので、今思えばラッキーなんですけれどね」と末廣さんは笑います。

製造方法も改良を重ねている
 醤油造りの現場を見れば見るほど感じるのは、熟成期間が長くなると醤油は濃くなるということです。醤油は、気温が高い夏をこえるとどんどん色が濃くなり、うま味を増やすと味が濃くなります。
 ところが、淡口醤油はあくまで素材を引き立てる立ち位置なので、自分は主張しない。そこを突き詰めれば突き詰めるほど、醤油自身の存在感を消していくわけですから、淡口醤油を造るための試行錯誤はとても地味で、工夫も苦労も表に出ることがなく気づかれにくいものです。 “長期熟成”や“濃厚”といった「こだわり醤油」に付きもののようなキーワードは、淡口醤油とは真逆の製法なのです。

 そんな淡口醤油を、もっと多くの人に使ってもらうにはどうしたらよいのか。末廣さんが考え続けていたある日のこと、こんな光景を目にしたそうです。
「ある料理屋さんで、塩をかけて食べさせている様子を目にしたのです。何てことのない光景ですよね。塩で食すと素材の味がよくわかる。あぁ、そうだ、淡口醤油は塩味が強くてうま味は少ない。これは素材の味を最も感じてもらえる醤油になるのではないか?!」

天然醸造で淡い色を出すのは至難の業だ

 料理に使うものとされてきた淡口醤油を、つけ醤油として使っていただく――。
 淡口醤油の前提を変えるような逆転の発想でした。そこからまた、淡口醤油のきれいな色は保ったまま、塩辛さを少し抑えるための試行錯誤が始まったそうです。
 結果的には米麹を使うことに行きつきましたが、こんなふうに改善と工夫を続けながらも表立って主張しない姿勢が、商品にも建物にも、そして末廣さん自身にも共通しているように感じます。

【職人醤油-こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

☆今月の醤油 龍野本造りうすくちしょうゆ(兵庫県 末廣醤油)
価格:381円+税/原材料:大豆(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩、アルコール
詳細はこちら↓
http://www.s-kura.com/?pid=8357164

【天然醸造の淡い色】

塩辛さもうまみも控えめで、食材を引き立てる淡口醤油本来の役割に徹してくれる“何に使っても失敗しない淡口醤油”。卵2個にダシを大さじ2、龍野本造りうすくちしょうゆと砂糖を少々入れて、フライパンに数回に分けて流しいれて巻いていくと、きれいなだし巻き卵の出来上がり。鰹と昆布でダシをとり、火にかけながら醤油で味付けし、最後に溶いた卵を加えてかきたま汁に。だしと具材のじゃまをせず上品に仕上げてくれるため、貝のお吸い物にも合う。塩やレモン代わりにかけて使うのもよい。
ページの先頭へもどる
【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
記事一覧
新刊案内