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食べるしあわせ
職人醤油のつくり方 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第13回 自己主張せずに素材をいかす淡口醤油の魅力(上)

城下町にたたずむ末廣醤油
 2016年にオープンした松屋銀座店のスタッフは皆、東京在住の新しいメンバーで、食に興味はありながらも醤油に関しては素人。「職人醤油」で扱う約80種類の商品名を覚えるだけでも大変です。そこで、たった一つ決めたのは「自分の好きな醤油を見つけて、自分の言葉で説明しよう」ということ。まず、毛利綾子店長が「この醤油、好きです」と選んだのが、末廣醤油の「淡紫」という淡口醤油でした。

 淡口醤油は西日本で多く使われていて、その名のとおり色は淡いのですが塩分濃度は高め。醤油自体の色や味というより、素材の彩りや風味を生かすことに徹しているため、懐石料理には欠かせない存在といわれています。
 末廣醤油があるのは、淡口醤油の主産地である兵庫県たつの市。そうめんでも有名なこの街は南北に揖保川が流れ、川沿いに淡口醤油の代表的企業として知られるヒガシマル醤油の大きな工場が建ち並び、その対岸は城下町になっています。

道路に面した入り口から一歩入ると、奥に静寂に包まれる製造現場が続く
 初めてこの地を訪れたのは、肌寒い時期だったように思います。
 淡口醤油を求めて当てもなく歩いていると、城下町の家屋敷や白壁の土蔵が多く残る街並みの中に、ヒガシマル醤油が運営する「うすくち龍野醤油資料館」を見つけました。そこで話を聞くと、近くに丸大豆から仕込みをしている醤油屋があるというので、その足で行ってみることに。それが、末廣醤油でした。

 間口は広いのですが、城下町の街並みに溶け込み、一見、奥に工場が広がっているとは想像もできないような佇まい。それでも一歩中に入ると、出荷を待つ商品がたくさん積まれていて、フォークリフトが走っています。静寂に包まれるその奥にも、さらに製造現場が続いているようです。
 資料館から紹介されて来たと事情を説明し、「ちょうど社長がいますから」と案内された事務所は、ガチャンと昔ながらの木戸のガラスが揺れる音がしました。靴を脱いで上がると石油ストーブの香りが心地よく、年季を感じさせる来客用のソファーもきれいに手入れされています。

末廣卓也社長
 突然の訪問にもかかわらず快く対応をしてくれた末廣卓也社長に、群馬県から来たと伝えると、「いや~、私もお取引先が長野県にあるので車で行くこともありますが、さらにその先ですか。すごいですねぇ」と、低姿勢で優しい口調。職人というより、印象は紳士そのものでした。

 醤油業界では多くが半製品の醤油を購入してきて、最終工程だけを自社で行っています。それが末廣醤油は自社で原料から仕込み、天然醸造の淡口醤油造りを続けているのです。
 その背景を尋ねると、思いもよらぬ話が返ってきました。(つづく)

【職人醤油-こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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