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食べるしあわせ
職人醤油のつくり方 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第11回 東京都内で造られる丸大豆天然醸造醤油(上)

「キッコーゴ」の屋号で親しまれる近藤醸造
 新宿駅から中央線で西へ。立川駅から青梅線に乗り換えて、さらに1時間ちょっと。窓の外にはのどかな風景が広がってきて、五日市線の武蔵引田駅に到着しました。
 約束の時間より早めに着いたので、少し遠回りをしながら歩いていくと、「キッコーゴ」と大きなロゴか書かれた建物が見えてきました。五日市街道沿いにある近藤醸造の店舗はこぢんまりとしているものの、お客さんの出入りも多くにぎわっています。
 店に入り約束がある旨を伝えると、「それなら社長が2階の事務所にいますから」と、奥の建物に案内してもらいました。外階段をのぼり事務所のドアを開けると、出迎えてくれたのは、とても人のよさそうなニコニコ顔。それが社長の近藤功さんとの初対面でした。

 その1週間ほど前、漠然と醤油にかかわる仕事をしたいと思い、初めての醤油蔵訪問で今や横浜で唯一の醤油メーカーとなった横浜醤油を訪ねました。突然の電話にもかかわらず、なんとその日のうちに訪問できることに。にわか仕込みにわずかな知識を詰め込んで訪ねると、筒井恭男社長が快く受け入れてくれました。醤油の原料や製造工程について、ひと通り説明してもらった後、「もっと醤油のことを勉強したいのですが、次はどこに行ったらいいですか?」と尋ねました。そのとき、筒井社長が勧めてくれたのが近藤醸造だったのです。
「国産の丸大豆で仕込みをしているし、木桶も持っている。近藤社長はとても優しいから、いろいろと教えてもらえるはずだよ」

当時の近藤功社長と筆者(左)
 そうして実現した近藤醸造の訪問。当時はまだほとんど醤油についての知識がなかったので、まずは製造現場を見学させてほしいとお願いしました。近藤さんが見せてくれたのは、小学生が工場見学に来たときに見せるビデオ。「子ども向けのものはわかりやすいからね」という近藤さんの言葉どおり、醤油の原料処理や麹づくりの様子など、醤油づくりの工程をひと通り説明しているもので、訪問した時期には行われていない作業も映像で紹介されています。なるほど、文字で勉強するよりも格段に理解しやすい。
 映像を見終わると、「これもやさしく書いてあるから」と1冊の本を見せてくれました。日本醤油協会が発行している『しょうゆの不思議』という200ページほどの本で、一問一答形式で醤油の知識がギュッと詰まっています。「何冊か持っているから差し上げますよ」と近藤さん。その後も蔵の中を案内してもらうなどして、貴重な話の数々を聞きました。

 帰り支度をしていると、近藤さんは車の鍵を手に、「駅まで送っていきますよ」と当たり前のように階段をおり始めます。「歩いてすぐの距離ですから、いいですよ」と何度もお断りしたのですが、近藤さんは軽トラの助手席にあった荷物を整え、送ってくれました。
 最寄りの駅まで車で数分、車内のエアコンが効くまでと開けていた窓は、結局閉められることなく駅に到着。こんなふうに次から次へと出てくる至れり尽くせりな対応に、恐縮しっぱなしでした。10年以上も前のことですが、そのときのことは今でもしっかりと覚えています。

「次はどこに行くべきですか?」
 近藤醸造でもこの質問を投げかけると、しばし「う~ん、どうしようかな」と考え、「そうだなぁ、茨城県は?」と近藤さん。「まだ木桶で仕込みをしている蔵元がたくさんあると思うから、行ってみたらどう?」とアドバイスをくれました。
 茨城県では1週間ほどかけて30の醤油メーカーを訪問。そこで得た手ごたえが、職人醤油での100ml瓶のアイデアへとまとまっていきました。(つづく)
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【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
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