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美しいくらし
東京ぶらり老舗散歩 江戸文化研究家
安原眞琴
第6回 朝顔市を粋に楽しむ②
根岸の里を歩いて朝顔市へ

 笹乃雪で、朝食をいただいたら、根岸の里を通って〈朝顔市〉に向かいましょう。まっすぐ歩けば10分足らずで目的地に着いてしまいます。でも、せっかくなので、〈里〉をもう少し散策しましょう。
 その前に、散歩帰りのお立ち寄りスポットをご紹介したいと思います。それは〈子規庵〉と〈書道博物館〉です。どちらも笹の雪の近所にあります。

 子規庵は、正岡子規の旧居跡です。広くはない、ごく普通の木造家屋ですが、当時のままの姿で残っています。晩年、病に伏した子規は、部屋の前の庭を見て俳句を詠んでいたそうですが、その庭も残っています。

 書道博物館は、子規庵の目の前にあります。書家で画家でもある中村不折(なかむらふせつ)が創った博物館がもとになっていて、今は台東区が管理しています。不折は、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の挿絵を描いた人です。

正岡子規の旧居跡・子規庵
 では、少しずつ朝顔市に近づいていきましょう。その途中に気になるスポットがあります。小野篁(おののたかむら)公と菅原道真(すがわらみちざね)公を祀る〈小野照崎神社〉(おのてるさきじんじゃ)です。

 気になるのは神社の雰囲気です。町の中とは思えない鬱蒼とした木々や、富士山の溶岩で創られた富士塚が、この辺りは、今は町になっているけれども、かつては根岸の里という村だったことを思い起こさせてくれます。
 なお、富士塚には、6月30日と7月1日の山開きの2日間だけ登れます。

威勢のよい売り声も楽しみたい
 いよいよ朝顔市に到着です。7月7日の七夕を中心に、前後3日間のみ開催されます。初日の6日の早朝になると、鶯谷駅から〈入谷の鬼子母神〉までの歩道に、突如として朝顔の露店商が120軒ほど並びます。
 そして、水色やピンクなど色とりどりの大輪の花を咲かせた朝顔の鉢の前には、半纏を来たお店の人がいて、その人たちの威勢のよい売り声や、売れた時の手締めの音などが、ここかしこから聞こえてきます。こんなに江戸情緒が満喫できる年中行事も、珍しいのではないでしょうか。

元禄時代創業の笹乃雪
 朝顔市は、「恐れ入りや(入谷)の鬼子母神」という文句でもお馴染みの〈入谷鬼子母神〉の縁日のようなものですので、お参りも欠かせません。朝顔市の時だけ、朝顔の形をした大小のお札が販売され、購入するとその場で、火打石で「カチカチ」と清めてくれます。

 鬼子母神前の広い通り〈言問通り〉も、朝顔市の時は通行止めになり、代わりに飲食や雑貨などを扱う露店商が軒を連ねます。車を気にせずに、露店で買い物や買い食いを楽しむといった、これまた昔ながらの縁日の醍醐味が味わえます。

 これらの露店は、朝顔市が終わる7月8日の深夜から、翌7月9日の早朝までのわずかな時間に、隣接する浅草寺に移動しなければならないそうです。9日と10日には浅草寺で〈ほおずき市〉があるからです。

 東京には、江戸時代よりも減ったとはいえ、まだ多くの年中行事が残っています。そんな行事に合わせて、老舗も特別な演出を行なってきました。古地図散歩をすると、〈朝顔市〉と〈笹乃雪〉の例のような、今まで気付かなかった〈粋な体験〉もできるかもしれません。

【笹乃雪】
東京都台東区根岸2-15-10
電話03-3873-1145
[営業時間]
11:30~20:00L.O.
[定休日]
月曜日(祭日の場合は営業し、翌火曜日休)


【makoto office 安原眞琴公式サイト】
http://www.makotooffice.net/

【イラストと地図:鈴木 透(すずき・とおる)】
1965年福島県生まれ。「釣りキチ三平」などを制作する矢口プロダクションを経てフリー。
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【やすはら・まこと】
1967年東京都生まれ。文学博士。専門は日本の中世・近世の文学、美術、文化、女性史。吉原文化の最後の継承者を5年間取材したドキュメンタリー映画「最後の吉原芸者 四代目みな子姐さん―吉原最後の証言記録―」を2013年に発表。立教大学・法政大学・大正大学・東武カルチュアスクールなどで講師を務め、天台宗総合研究センター、日本時代劇研究所などの研究員でもある。NHKカルチャーラジオ「歴史再発見 芸者が支えた江戸の芸」を2016年に担当。著書に『「扇の草子」の研究――遊びの芸文』(ぺりかん社)、『超初心者のための落語入門』(主婦と生活社)、『東京の老舗を食べる』(亜紀書房)などがある。
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