× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 新刊・既刊案内 お問い合せ
食べるしあわせ
職人醤油のつくり方 「職人醤油」代表
高橋万太郎
第9回 「食いしん坊」のこだわりが醸し出す濃厚な味わい(下)

地元産にこだわっている大豆
 片上さんから聞いた話で印象に残っていることの一つが、醤油づくりは「減点法」だというものです。
 「原料の時点で100点なんです。蒸した直後は本当によい香りがして、その蒸し大豆から麹をつくって熟成させますが、一度、減点になると加点することはできません。当たり前の作業を繰り返してやっと、点数維持なのです」

 片上さんはまた、できるだけ地元でとれる奈良県産の大豆を使っています。「生産量が限られているので、毎年、原料確保が大変です。使いたい人たちは多いので、自分らだけがたくさん使うわけにもいかないのです」

 全国の醤油生産量でみると、全体の8割は脱脂加工大豆を原料にしていて、丸大豆を使っている割合は2割しかありません。地元産の丸大豆を使っているのであれば、「脱脂加工大豆は大豆の搾りカスだから、うちでは使いません。地元産大豆を使って……」と、大々的に宣伝文句としてアピールすることもできるのですが、片上さんは「脱脂加工大豆は全然ダメじゃないですよ!」とキッパリ断言します。

熟成のときを待つ
 「脱脂の立場を低くして丸大豆を高めようとしてはあきません」と、脱脂加工大豆のよさをとくとくと語り出します。製法はこうで、流通価格はこう。醤油を仕込むときにはこんなメリットがあって、デメリットはこれで……といった具合。
 では、なぜ片上さんは奈良県産の丸大豆を使うのでしょう? そう質問すると、「お客さまに“この豆を使っています”とお見せできるもので作りたい」という答えが返ってきました。

 最近、引っ張りだこなのが醤油の仕込み教室。もともと、取引先からの依頼で開いたそうですが、これが大好評。仕込みをしたのだから各家庭で熟成した後に搾り教室も開催してほしい、さらには、来年はもっといいものができそうだからもう1回続けてほしいとお願いされ、その噂を聞きつけた他の団体からも開催してほしいと、要望が途絶えないのだとか。

丁寧に圧搾される
 醤油の職人さんというと口下手な方も多いのですが、片上さんの話はとても面白いのです。しかも、難しい発酵の話をわかりやすく楽しく語らせたら相当なもの。例えば、醤油は人力をこえた大きな力で搾れるよう油圧式の圧搾機などを使います。普通なら、「ものすごく大きな圧力をかけて絞ります」と説明するものですが、片上さんはその力を計算して身近なものに例える。いわく、「A4サイズの紙に軽自動車をのせるくらいの力」といった具合です。それを聞いた会場から「おぉ~」という歓声が上がる様子が目に浮かぶようです。
 「よいものを作っていればいい時代ではないですよ。しゃべってわかってもらわないと」と片上さん。

 蔵見学では片上さんの話を存分に堪能することもできるのですが、「見学していただくのは自分のため」とも。「人さまを蔵の中に案内するとなると、いつ見られてもいいように掃除しますでしょ。だから自分のためなんです」
 こんな受け答えが、いかにも片上さんらしいな、と思ってしまうのです。

☆今月の醤油 天然醸造醤油(奈良県 片上醤油)
価格:381円+税 / 原材料:大豆、小麦、食塩
詳細はこちらから↓
http://www.s-kura.com/?pid=9917047

【“食いしん坊”が手がける4種類の醬油】

「マニアックな食いしん坊」がつくるのは、国産大豆と木桶仕込みにこだわる濃口、淡口、再仕込み、溜の4種類。濃口の「天然醸造醤油」は、醤油の違いが味の違いになるキンピラに、「うすくち天然醸造醤油」はブリやカンパチといった白身の刺身はもちろん、豆腐にかけると大豆の甘みを引き立てる。塩分まろやかでキリッとした旨みがある「重ね再仕込み醤油」は脂の多い肉に、旨みが凝縮されている「自家用たまり醤油」はサバの酒蒸しにピッタリ。そのほか、すき焼きに合う濃口醤油「青大豆醤油」、年末限定の「やきもち醤油」……と、個性派ぞろいの醤油たちは、どれも一度試してみる価値あり。
ページの先頭へもどる
【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
記事一覧
新刊案内