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きれいをつくる
みんなの漢方教室 東海大学医学部准教授
新井 信
第2回 葛根湯は飲むタイミングが大事

※このWEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『わが家の漢方百科』が2017年4月に発売されました(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。




 前回、紹介したように、「かぜのひき始めには葛根湯」です。これは、もはや日本人の常識といっていいのかもしれません。実際に、葛根湯が効いたという人も多いでしょう。しかしその一方で、葛根湯を飲んだのにかぜがひどくなってしまったという人もいるのではないでしょうか?
 実は、葛根湯は飲むタイミングがとても大事です。なんとなくゾクゾクしてのどに違和感がある程度なら効果は抜群ですが、そのタイミングを逃してしまったときは、小柴胡湯の出番となります。

 それはなぜでしょう? 漢方薬によるかぜの治療でまず知っておいてほしいのが、かぜには「陽のかぜ」と「陰のかぜ」があるということです。かぜの治療で大切なのは、この2つのタイプのどちらなのかを判断することです。さらに、どのステージまで進んでいるかによって服用する漢方薬も変わってきます。

 漢方でいうかぜのステージとは「六病位」のことです。六病位のうち、太陽病、少陽病、陽明病の3つを「三陽」、太陰病、少陰病、厥陰病の3つを「三陰」と呼び、三陽が「陽のかぜ」、三陰が「陰のかぜ」にあたります。
 若年者や体力がある者に多い「陽のかぜ」は熱感が強く(悪寒もある)、顔面紅潮(上気して顔色が赤い)が特徴です。一方の「陰のかぜ」は高齢者や虚弱体質者に多く、悪寒ばかりが強く(熱感がない)、顔面蒼白(顔色が悪い)であることが特徴です。

 かぜのステージは刻々と変化し、ごく初期での太陽病を過ぎると、口の中が苦くなって食事の味がまずく、食欲が落ちる少陽病へと進みます。葛根湯が効くのは太陽病の段階。少陽病には小柴胡湯です。
 かぜの大半を占める太陽病と少陽病は市販の漢方薬を飲み、暖かくして早めに寝るなど適切に対処すれば、自分で治すことができます。

 普通のかぜは放っておいても少陽病あたりで治ってしまいますが、こじらせると、高熱や口の乾きがあらわれる陽明病、さらには消化器の症状や全身のだるさなどがあらわれる太陰病へと進むこともあります。
 また、高齢者や虚弱体質者のほか、普段は丈夫でも大病をした後で体力を消耗しているときのかぜは、いきなり少陰病の症状が出ることがよくあります。これを「直中(じくちゅう)の少陰」といいます。顔色が悪い、悪寒ばかりで熱感が少ない、寒がるというのが、その特徴です。
 太陽病や少陽病以外のステージのかぜは、病院や漢方薬局に相談をすることをおすすめします。

(構成・天野敦子)

【東海大学医学部専門診療学系漢方医学のホームページアドレス】
http://kampo.med.u-tokai.ac.jp/

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【あらい・まこと】
1958年埼玉県生まれ。東北大学薬学部、新潟大学医学部卒業。医学博士。総合内科専門医、漢方専門医、薬剤師。専門は漢方医学。早稲田大学非常勤講師、横浜市立大学非常勤講師、新潟大学医学部非常勤講師などを経て2005年から東海大学医学部。主な著書に『症例でわかる漢方薬入門』(日中出版)など。

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