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美しいくらし
いつか訪ねたい世界の美しい村 トラベル・ジャーナリスト
寺田直子
最終回 キャプドナーク・ル・オー

※このWEB連載原稿に加筆してまとめた単行本(『フランスの美しい村を歩く』が好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。


 「フランスの最も美しい村」は現在、150村ほどありますが、加盟からはずれたりするものもあれば、新しく認定される村もあります。
 旅の途中、車を運転していると私の集めた情報やフランスで入手した地図には載っていない村の名前を示すサインを見つけました。「美しい村」であることを記した標識です。どうやら距離もそれほど遠くないようなので急きょ予定変更。村へと脇道に入ります。そうしてたどり着いたのが、2010年6月に「フランスの最も美しい村」のひとつとなったキャプドナーク・ル・オーでした。

 ロット川を望む100mほどの小高い丘にたたずむ小さな村はすでに夕暮れ間近のため、観光客も村人の姿もなく静かです。きっと村人の憩いの場所なのでしょう。展望エリアからは、ロット川とそこに接したキャプドナーク・ル・オー駅が眼下に広がります。ちょうど電車が来たので鉄道好きの私は1枚、写真をパチリ。美しい村はレンタカーがないと行けない場所が多いのですが、ここは駅からタクシーか、あるいは健脚の人なら散策がてら歩いて訪れることもできそうです。

 実はキャプドナーク・ル・オーはとても歴史のある村で、紀元前のガリア期、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)によって征服されていた時代の遺跡が現存。村にも当時の要塞跡などが残されています。要塞の上に登れるようなのですが、この日はすでに観光案内所も閉まっていたので断念。代わりに人のいない村を歩きます。

 路地を抜け、村のはずれに行くと要塞を思わせる石造りのアーチがあり、その先には周辺を見渡すパノラミックな眺望が。ちょうど時刻は日暮れ前の透明感あるマジックモーメント。きらめく光の中、あまりにも美しく平和な風景に思わず見入ってしまいました。重厚なアーチに手をかけると、ざらりとした石の感触が伝わってきます。その存在感に、村がたどってきた時間の長さと時代の流れが積み重って見えます。それでも私が見ているのどかで平和な眺望と、かつてカエサルによって戦いが繰り広げられた場所だということのギャップはとてつもなく大きく、哀しいかな想像がつきません。このほか、当時の噴水や傷を負った兵士のために必要だったものか薬草を育てていたという庭園などもありますが、すべてが時を止めたまま村の一部として残されているのが印象的でした。

 ゆっくりと村をまわり駐車場に戻る途中、すでにクローズしたお土産屋さんのガラス窓に小さな中世の騎士の人形が飾られていました。映画やドラマで見るようなコスチュームの騎士たちが戦っていた争乱の時代、そんなときでも夕暮れの一瞬を村人たちはやはり美しいと感じることはあったのでしょうか。時間を巻き戻すことはできませんが、平和を愛し、自分たちが暮らす場所を愛おしいと思う気持ちは1000年前も、そして今も決して変わらないでいてほしいと心から願うのでした。













村へのアクセスには電車が便利。パリ~キャプドナーク間の直通電車が1日2本運行している。キャプドナーク駅近くでレンタカーの利用が可能。



【写真提供:寺田直子、地図作成:高尾 斉】

フランスの観光情報はこちらから↓
フランス観光開発機構オフィシャルサイト
http://jp.rendezvousenfrance.com/
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【てらだ・なおこ】
東京都生まれ。日本とオーストラリア・シドニーの旅行会社勤務後、編集プロダクションを経てフリーランスとして独立。これまでに60カ国以上を訪れ、年間150日は国内外のホテルに宿泊している。著書に『ホテルブランド物語』(角川oneテーマ21)、『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)などがある。
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