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にっぽん味噌蔵めぐり
実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさき
第8回 雄弁な店主のいる都内の味噌蔵(糀屋三郎右衛門・東京都)

糀屋三郎右衛門7代目の辻田雅寛さん

 味噌を学びに各地をめぐるようになり、日本の伝統文化ともいえる木桶にこだわって仕込みを続けている日本酒や味噌、醤油などの蔵元さんが集まる会で出会ったのが、糀屋三郎右衛門7代目の辻田雅寛さんでした。辻田さんイコール、陽気でお話上手な味噌蔵さん!

 声を聞くだけでとても元気になれるので、ご近所さんだったらきっと毎日会いに行ってしまいます。味噌にまつわるあらゆることをとても丁寧に説明してくれる方で、最近は味噌のパッケージ表記のルールが変更になったことと、食塩相当量の算出方法について教えていただきました。

 糀屋三郎右衛門は、もとは茨城県で創業。漬け物屋が多くあり麹需要が高かったことから、昭和14年(1939年)に現在の東京都練馬区に移転し、家族で味噌造りから販売までを手がけています。麹から味噌造りをしているのは都内ではここだけ。先代から受け継ぎ100年以上使用している麹蓋と木桶、そして手づくりしている菰(こも:温度と湿度を保つために麹蓋にかぶせるために藁(わら)を編んだもの)を今も大切に使っています。

店先には「昔みそ」ののれんがかかる

 味噌造りの肝だという麹は、レンガづくりで入り口は腰より低く、しゃがんで出入りするのが特徴的な室でつくられます。「手づくりだと、ときどきものすごい良い点数の麹ができるから、それがうれしいんだよね。麹菌が相手だから、いつもそうはさせてくれないんだけど。難しいけどそれが面白いよ」と辻田さん。

 白米麹、玄米麹、小麦麹、大麦麹と、おいしさにこだわって選んだ有機大豆でつくられる味噌は天然醸造の生タイプ。とにかく香り高く、「塩なれ」といって、塩味が立っている感じがなく全体が一体となっている味わいが特徴です。地元愛がとても強い辻田さんは、近隣の小学校や地域のカルチャーセンターなどへ味噌づくりを教えに行っているほか、練馬産の大豆で味噌をつくる活動にも積極的に取り組まれています。

「第3回ガチみそ蔵の会」の見学で

 大切な思い出になっているのが、2019年夏に私が主催した「第3回ガチみそ蔵の会」(ガチみそ蔵の会:私が主催する味噌蔵の交流の会)で、全国から参加してくれた味噌蔵の皆さんと糀屋三郎右衛門を見学したときのことです。
 お話し上手な辻田さんは、参加していた皆さんから質問や会話を引き出すのも上手。「麹をつくる際は1回でどのくらい仕込むのですか?」「麹の温度管理はどのようにしているのですか?」といった麹に関する質問が多く出てきて、会は大盛り上がり!みんなの距離がグッと縮みました。
 

麹造りに欠かせない手製の道具

手作業で袋詰めしている米糀


 米を蒸すときに蒸気がむらなく行き渡るようにとつくられたお手製の木の部品や、麹室の内部を公開してくれただけでなく、「完成した麹を外しやすくするために、麹蓋の下にあらかじめシートを敷いておく」など作業上でのアイデアも教えてくれた辻田さん。代々研究されてきたことを惜しみなく伝える姿勢と雄弁さは、これからも多くの味噌蔵の力になっていくのだと思いました。(つづく)

◆◆糀屋三郎右衛門◆◆


〒176-0024 東京都練馬区中村2-29-8
TEL:03-3999-2276
https://www.kouji-ya.com/
 茨城県で創業し、昭和14年(1939年)に現在の東京都練馬区に移転。白米麹、玄米麹、小麦麹、大麦麹と、おいしさにこだわって選んだ有機大豆で、味噌造りから販売までを家族で手がけている。

◆岩木さんセレクトのイチオシ味噌とおススメレシピ◆


すずしろの里
 


【種類】米味噌
【味】麹歩合10割、食塩相当量10.1g、熟成期間3~6カ月
【色】黄色
塩味はしっかりめの中辛ですが、全体になじんでカドはなく、まずは高い香りを楽しんでもらいたい味噌です。地元練馬の名産である大根にちなみ「すずしろの里」と名づけられたそうなので、今回は大根を使用した味噌レシピをご紹介します。

おススメレシピ

「大根と小松菜の豚バラ味噌炒め」


【材料】(2人分)
油小さじ1
大根1/4本(250g)
小松菜1房
豚バラ肉100g
酒大さじ1/2
a=味噌大さじ2、砂糖大さじ1/2、みりん大さじ2
【作り方】
1. 大根は厚めに皮をむきひとくち大の乱切りにする、小松菜は根元を落とし3cm幅に切る、豚バラ肉は大きめ3~4等分に切り酒で下味を付ける、ボウルにaを入れ混ぜる
2.フライパンに油をひき熱し、大根を入れ中火で5~6分ほんのり焼き色が付くように炒める
3.下味を付けた豚バラ肉と小松菜の茎を加え1分ほど炒めたら、aと小松菜の葉を加え全体が均一になるよう混ぜる
【ポイント】
・先に大根を炒めることで、長時間煮なくても火を通すことができ、食感良く仕上がります
・豚バラ肉を加える際は、広げて並べて加熱することで料理がきれいに仕上がります
・みりんは本みりんを使用すると、コクと風味が増しておいしく仕上がります

(写真提供:岩木みさき)

★岩木みさきさんが味噌との出会いや奥深い魅力について語るインタビュー「今こそ伝えたい、味噌の力」もぜひお読みください。

【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】http://misotan.jp
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【いわき・みさき】
1988年神奈川県生まれ。10代のころに摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感して料理の道へ。病院栄養士として3年間勤務したのち、2012年に実践料理家として独立。その後、日本の伝統調味料である味噌に魅せられ、4年で日本各地60カ所以上の味噌蔵探訪を続け、その成果をWEBサイトやレシピ、イベントなどを通じて発信している。
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