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食べるしあわせ
今こそ伝えたい、味噌の力 実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさき
第2回 蔵の味噌は、生きている
 食のプロとして不確かな情報を伝えるのは無責任だと、「自分の目で見て、直接会って、話を聞いて、触れてきたこと」を発信している岩木みさきさん。第2回は、蔵に自ら足を運んだからこそ見えてきた蔵人の素顔、味噌の魅力について語っていただきます。

―― 最初はよくわからないところから「みそ探」を始めて、3年半経って気づいたことはありますか?

 料理研究家の視点でいうと、「現地に行かないと正しい答えは見えない」ということです。もともと実践主義、現場主義ではあったのですが、現場に行って、見て、聞いて、ということは必須だということを、「みそ訪」によってあらためて確信しました。

―― 現地に行って、「これは正しかった」と思ったことは何ですか?

 味噌というと、寡黙で頑固なおじいさんが静かにつくっているのかと思いきや、明るくておしゃべり好きの人がいたり、情に厚く涙もろい人がいたり。人は外見で判断しがちですが、「別に大変じゃない」と言いながら本当は深い気持ちを持って味噌をつくっている方が多く、「木桶仕込みの文化を途切れさせたくない」という熱意、忍耐力、精神力を感じました。

 私は車を運転しないので、蔵元をめぐる際には駅からタクシーを使うことが多いのですが、そんなときには「味噌蔵めぐりに来ているのですが、この地域の人は味噌をよく食べますか?」「どういうお味噌ですか?」と、必ず聞くようにしています。地元のスーパーもチェックして、たとえば九州ならすべて麦味噌かと思いきや、色の濃い赤味噌が半分ぐらい置いてあるとか、県ごとではなく昔の藩の名残りで味噌の種類が分かれているなとか、西京味噌で有名な京都でも、日常は白味噌ではなく黄色や赤など色の付いた味噌や合わせ味噌を使用しているとか……。面白い発見がいつくもありました。

―― ちなみに、初めて行った味噌蔵はどこですか?

木桶仕込みの味噌蔵元同士を繋ぐ「ガチみそ蔵の会」を主催。蔵見学などのイベントも開催している(写真提供:岩木みさき)

 1軒目は神奈川県に200年以上続く麹屋さん、「川口糀店」というところです。自分で味噌をつくってみたいと思って、木桶のことや味噌仕込みのことなどをいろいろ聞きに行きました。その蔵にたまたま寿司桶が置いてあったのですが、それを触ったとき、こんなになめらかな赤ちゃんの肌みたいなものがあるのかという驚きと、ちょうど30代の手前で「私、料理家としてこれからどうしたらいいんだろう?」と焦っていたプレッシャーもあったのか、号泣してしまって……。

 そのとき社長の川口さんが、「岩木さんにはまだ味噌の知識はないけど、これだけ一生懸命だったらやれるだけやったらいいんじゃない?」と言ってくれて、最初のイベントのときもたくさんアドバイスをもらいました。川口糀店さんにはもう14、15回は行っていて、いろいろ教えていただいています。木桶仕込みの味噌にのめり込むうち、蔵ごとの個性豊かな味噌を多くの方に届けたいと思うようになり、賛同してくださった8つの蔵元さんとチームをつくり、「ガチみそ®」シリーズという商品もつくってしまいました。

―― 白、黄、赤(すべて米)、麦、豆、合わせ味噌と、色や種類がみんな違っていて、わかりやすいですね。容器のデザインもかわいいし、容量も200gと少ないのが、特定の味噌しか使わない人にとっては、ちょっと試してみたくなるサイズなのかも。

 構想から2年半、イベントでの販売やリニューアルを経て、今年11月に正式販売にこぎつけました。ちなみに「ガチみそ®」の商品は、「職人醤油」さんのサイトで販売してもらっています。全種類違うものがそろったのは全くの偶然でしたが、試行錯誤を重ね、これをきっかけに、「味噌」というものを広く知ってもらえたらと思っています。200gというのは、ちょうどお味噌汁10杯分。いくつか使ってみて、たとえば「白みそが気に入った。もっと大きいのがほしいな」となったら、直接、蔵元さんから買ってくださいという方針です。これで商売がしたいのではなく、あくまで今まで知らなかった味噌の「入り口」になってくれればというのが私の思いです。ところで、蔵にあるものは生きた味噌ですが、市販のものは加熱されていることをご存じですか?

「ガチみそ®」シリーズは現在8種類(写真提供:岩木みさき)


―― えっ?  知らないです!

 醤油は火入れすることで殺菌もするし香りが立つので、火入れするのが当たり前なのですが、生味噌は麹菌の働きによって熟成が進み、香りや風味がどんどん深まっていきます。つまり、味噌は本来、生きているのです。しかし、生のまま出荷すると流通上温度が上昇し、微生物などの菌が二酸化炭素を出して容器がパンパンになったり、発酵が進んで色が変わったりして品質が均一になりません。
 そのため店頭に並べる味噌は、加熱殺菌して菌の働きを止めてしまうわけです。「ガチみそ®」シリーズはすべて生味噌ですが、味噌にこだわりたい方はぜひ蔵元さんに出かけて、桶から掘り出して分けてもらってください。冷蔵保存さえすれば、毎日生きた味噌を食べることができますよ!(つづく)

―― 次回は、知っているようで知らない味噌の基礎知識を教わります。

(構成・宮嶋尚美)

【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】http://misotan.jp
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【いわき・みさき】
1988年神奈川県生まれ。10代のころに摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感して料理の道へ。病院栄養士として3年間勤務したのち、2012年に実践料理家として独立。その後、日本の伝統調味料である味噌に魅せられ、3年半で日本各地50カ所以上の味噌蔵探訪を続け、その成果をWEBサイトやレシピ、イベントなどを通じて発信している。
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