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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第7回 村中まるごとトウガラシづくし「エスプレット」(上)

窓枠を赤で統一したバスク地方の家並み


 どちらかというと辛党で、スイーツよりお酒を選んでしまう私がどっぷり甘いものに浸る日があります。それは、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」の日。日本でも開催されていますが、毎年のようにパリに出かけてチョコに囲まれた1日を過ごします。
 パリだけでなく、地方のショコラトリーもたくさん出展するこの祭典。昨年の秋、会場を回っていると気になるブースを見つけました。それはフランスの西部、スペインと国境を接したバスク地域を旅したときに訪れたことのあるチョコレート屋さんのブースです。試食用に差し出されたチョコを口に含むと、コクのある甘みが口内に広がったあと、ピリッとした辛みが舌を刺激しました。ああ、これはトウガラシの入ったチョコだな、と気づいたとき、その故郷であるエスプレット村の風景が脳裏によみがりました。

トウガラシで飾られた家

ピマン・デスプレットは日本のものより大きめ

 最近、「バスク風○○ケーキ」といったコンビニスイーツが登場するなど、日本でも徐々に知られるようになってきたバスク。ピレネー山脈の西端でフランスとスペインにまたがる一帯を指し、行政区分ではなく歴史・文化的背景からこう呼ばれています。古代ローマの時代からこの地に暮らすバスク人たちは、支配者に屈することなく、独自の言語と文化を守り続けてきました。近年はスペイン側のサン・セバスチャンが美食の町として知られるようになったことで人気が急上昇し、フランス側フレンチバスクへの関心も高まっているようです。

 このフレンチバスクの魅力は、海と山の両方を楽しめること。大西洋に面したリゾートの顔を持ちながら、一方で雄大なピレネーの山懐に抱かれる場所でもあるのです。エスプレットは後者、つまり山バスクに点在する村の一つです。
 ここを初めて訪れたとき、その個性的な家並みに驚かされました。トウガラシの里であることは知っていました。きっと、多くのフランス人にとっても馴染みのある名前に違いありません。
 なにしろ、ここでつくられる赤い香辛料は「ピマン・デスプレット(エスプレットのピマン=トウガラシ)」と呼ばれ、パリのスーパーでも売られているほどポピュラーなのですから。トウガラシを使った名物が買えるかしら、くらいの気持ちで行ったところ、名物どころか村の風景の一部となっているではありませんか。

 窓枠や鎧戸が赤や緑で統一されたバスク特有の民家をよく見ると、壁にトウガラシがびっしり吊り下げられているのです。日本のものよりずっとサイズが大きく、赤黒い色合いで存在感十分。ホテルやレストランだけでなく、一般の民家も屋根の下や窓辺に飾り付け、まるで競い合っているかのようです。後で調べたところ、現在は衛生上の問題もあり、工場で乾燥させるとのことですが、昔からの景観を守るために吊るす習慣が残っているのだそうです。収穫直後なら真っ赤なトウガラシが白壁を飾り、より鮮烈な眺めとなることでしょう。(つづく)


【エスプレットの行き方】
パリのシャルル・ド・ゴール空港またはオルリー空港から飛行機で約1時間15分のビアリッツ・ペイ・バスク空港へ。そこから車で南へ約30分。


(写真:伊藤智郎)

【11月下旬に新刊発売】
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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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