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美しいくらし
フランスの一度は訪れたい村 トラベルライター
坂井彰代
第6回 秘境を抜けて陶器の里へ「ムスティエ・サント・マリー」(下)

植物や鳥をモチーフにした絵柄が美しいムスティエ焼き


 この村は「ムスティエ焼き」という高級陶器の里としても知られています。その歴史は古く、17世紀にさかのぼります。ときは、ヴェルサイユ宮殿を建設したことで知られる太陽王ルイ14世の時代、イタリアからやってきた修道士クレリシーが独自の釉薬や絵付けの技術をこの地に伝えたのです。素朴そのものだった陶器は白い地に手描きの絵が施され、洗練された逸品に大変身! 折しも当時のフランスは度重なる戦争などのため財政難に陥っており、金銀食器の使用を控えるようお達しが出ていました。まさに時期を得たムスティエ焼きは王室御用達となり、その名声はまたたく間に広がったのです。


 その後、衰退した時期もありましたが、20世紀になって人気復活。伝統工法は今に継承され、村の細い通りには鮮やかな絵皿をディスプレイした専門店が並びます。その一つに入ってみると、店内はお皿、燭台、花器などさまざまな商品で埋め尽くされていました。中にはマリー・アントワネットの時代に好まれたといわれる品も。たとえば「エピシエール」と呼ばれる容器は、食生活が肉中心だったため、消化を助けるためのスパイスを入れていたのだそう。当時、お肉を消化できないくらい食べていたなんて、かなり上流階級の方たちが愛用していたに違いありません。

 何かお土産にと思いましたが、割れ物だし重いしで悩むところです。いろいろ見ていると、ジャムを入れるのにちょうどいい小さな陶器を見つけました。色がきれいなだけでなく、表面が滑らかで触り心地まで上品なムスティエ焼き。朝食のたび、きっとこの村のことが思い出されることでしょう。
 大自然が生み出したダイナミックな景観のあとに心癒される陶器の里。プロヴァンスの恵みは、明るい太陽だけではないようです。

【ムスティエ・サント・マリーの行き方】
パリのシャルル・ド・ゴール空港またはオルリー空港から飛行機で約1時間半のニース・コート・ダジュール空港へ。ここから車で北西へ約3時間。


(写真:伊藤智郎)

【トラベルライター・坂井彰代さんの記事】
フランスの教会に魅せられ、これまで100以上を訪ね歩いてきた坂井さんが、人々から愛される個性豊かな教会を紹介してくれます。フランスの美しい教会と村の両方を楽しめる連載「フランス小さな村の教会巡り」はこちら。
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【さかい・あきよ】
徳島県生まれ。上智大学文学部卒業。オフィス・ギア主宰。「地球の歩き方」シリーズ(ダイヤモンド社)の『フランス』『パリ&近郊の町』などの取材・執筆・編集を初版時より担当。取材のため年に3~4回、渡仏している。著書に『パリ・カフェ・ストーリー』(東京書籍)、『パリ・メトロ散歩』(同)がある。
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